犬の歩く速度を加減する訓練です。
犬を引いていて強い力で引っぱられたり、人と犬との歩調がみだれて、正常な歩き方ができないとき、その歩調を正すために用いられるものです。
訓練する人は右手にひもをもって犬を左側につけながらふつうの足どりで歩き、犬が前進しすぎるときは、「あとへ」の号令と一緒に左手で訓練する人の左ももの上を軽くたたき、同時に左手でひもをたぐりよせ、犬を左足側につけて頭をなでてやります。
また、犬によって、人のほうが遅れて歩いている場合には「あとへ」の号令と一緒に、訓練する人が左にくるりとまわって足がわに犬をつけなおし、歩く速度をだんだんゆるめながら正常の歩き方に変えます。
ときどき歩く速度を早めたり、遅くしたり、またはとまったり、いろいろ変化を与え、訓練する人の歩く速度に注意させながらくり返し訓練します。
高橋ナツコ
品物の下へきたら「待て」または「止まれ」の号令をかけ、犬をほめてやりながらその品物を落としてころがし、犬に与えます。
これを基礎にして十分に練習してから、犬が自発的にそのものの下に行くようになったら、ひもを長いものに変えて少しずつ距離を長くしていきます。
これと一緒に、目標になる品物をときどき与えないで、ただ犬のたどるコースだけは毎日同じコースにして、目標物がなくてもその位置まで、かなりの距離を前進するように訓練していきます。
つまり、同じコースで目標物を示した後、犬にわからないようにその品物をかくし、物を置くような格好をしながら訓練する人は後退し、犬だけ前進するようにします。
物がなくても、その位置まで前進するようになったら、一度犬を呼びもどして、その物を与えます。
やがて、犬は訓練する人が物を持っていても、指示した目的地まで行けば物を与えられることを知っていますから、しだいに呼びもどしてから与えるようにします。
高橋ナツコ
「前へ」は、訓練する人の指示に常に注意をはらいながら、前方を警戒するために行なう号令です。
この訓練にはいろいろな方法がありますが、まずへいや棚の前にひもをつけて連れて行きます。
そしてボールなどの目立ちやすいものを犬によく見せて覚えさせます。
そして、それをほしがらせながら犬の届かない高さのところに置きます。
それがすんだら、犬と一緒に2、3歩後ろへさがって、ふたたびその品物を指さして示しながら「前へ」の号令で犬と一緒にその品物が置いてあるほうへ進みます。
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これは犬が最もいやがる姿勢ですが、犬の服従精神を徹底させるためには効果があります。
しかし、訓練方法は難しく、何べん行なっても横に転がったり、背を地面につけてあおむけに寝ころがったりします。
完全にできるようにするためには、訓練する人自体の忍耐と努力も大いに必要です。
言葉だけではなかなかわかりませんから、強引な方法として、犬を訓練する人の左側に立たせておき、「伏せ」の号令と一緒に、左手で犬の首輪をつかんで後ろ下方に引き、右手を前の下方に伸ばし、静かに下げます。
このとき、左手の力の方向は後足指の着地点に向けて圧力を加えます。
ちょうどマッチ箱の中身を抜いたカラを、片側へ押しつぶすような調子でやるわけです。
ふつうの家庭では、あまりこのしつけの必要はありませんが、猟犬、軍用犬、警察犬には欠くことのできない動作です。
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まず「お預け」ですが、犬の食餌のとき、飼い主の「よし」という許可がないかぎり、けっして食器に触れさせないようにします。
これも成犬になってからより、子犬のときのほうがずっと容易にしつけられます。
食餌を入れた食器を空腹の犬の前に置いて、「待て」または「お預け」と言って、食べられないように犬の体を押さえておきます。
そして、しばらく間をおいてから「よし」と言って犬の体を離します。
「よし」という言葉がないかぎり食べてはいけないような習慣がつけば、自分の食器以外のよその台所やごみ箱をあさるようなことはしないものです。
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犬はその本性として、飼い主が歩き出せばその後からついてくるものですが、そのとき「待て」という命令を与えて、犬を座ったままのかたちで待たせるようにします。
待たせておいて「来い」と言うのですが、これは割合簡単にできます。
「待て」には「お預け」と同じ意味をもたせることもあります。
「来い」は言葉で言ってもよいのですが、できれば口笛のほうがよくとおりますし、感じもよいものです。
「来い」の合図には訓練する人が手を下におろして、号令のかわりにするのもあります。
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犬の前に飼い主も腰をおろし、犬の前足を軽くにぎり「お手」と言ってもちあげる。
地面に座らせた犬2則鰻飼や王自身も腰をおろします。
次に片手で犬の前足の左右どちらかを「お手」「お手」と言いながらにぎり、少しもちあげてやります。
これを何べんもくり返していますと、だんだんと前足に触れなくても、「お手」の声だけで、自分から主人のさしだした手と同じ側の前足をさしだすようになります。
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「座れ」とは、前足はそのままの姿勢で腰をおろすことです。
はじめは引きひもをつけてやりますが、まず腰を上から押して「座れ」「座れ」と言いながら腰をかがめさせます。
それから、だんだん距離をおいてやるようにし、「座れ」という言葉と同時に、手を水平におろします。
完全に覚えたのちには、その手の格好だけで言葉を使わないで座るようにしつけます。
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招呼のしつけは、すべてのしつけのうちで最も基礎的な訓練です。
これも子犬か幼犬時代にしつけておかないと、成犬になってからでは難しいようです。
子犬のうちに愛情をもってしっかりしつけ、飼い主の呼び声一つで、どのような動作も機敏にやってのけるようになれば、飼い主のほうも素直にいうことをきく犬にはいっそう愛情がわいて、犬を育てる醍醐味が増そうというものです。
しつけを行なう場所は、なるべく犬と飼い主だけでやれるところ、人やほかの犬のいない原っぱや空地、庭先などを選びましょう。
また、しつけの間はなるべく食べ物を与えることは避けます。
極端なせっかんも子犬に恐怖心をいだかせるだけですから避けたいものです。
何度もふれたように、短気を起こすことだけは慎んでください。
気長に同じことを幾度もくり返すという気持ちを最初から胸に刻んでしつけにかからなければなりません。
招呼のしつけの種類は、最も一般的な「お手」から始まって、「伏せ」「飛べ」「座れ」「持ってこい」など十指にあまるほどあります。
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飼い主以外の他人からは、絶対に食物を食べないようにするしつけを拒食といいます。
このしつけのためには、あらかじめ犬と顔見知りでない人を選んでおいて、その人の手からとうがらしとか苦いものを入れた食餌を与えてもらうようにします。
他人の与えた食物を食べるとひどい目にあうことを、子犬に思い知らせるようにするわけです。
このしつけも2、3日おきに根気よく続けないと忘れてしまうようになります。
拒食のしつけが完全に成功すれば、泥棒に買収されたり、毒物を飲まされるような心配はなくなります。
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犬に自分の住居を覚えさせるには、やはり子犬の時代からしつける必要があります。
外で遊ばせている子犬を連れ帰ってきたとき、犬舎の入り口で「ハウス」と言って入れてやります。
子犬が犬舎に入りたがらないときは、むりやり押し込むようにして、そのたびに「ハウス」をくり返し、犬が命令に従ったときは頭をなでてほめてやりましょう。
犬の機嫌が悪かったりして、犬が思うままに入りたがらないのを放任したりすると、子犬は飼い主の甘さにつけ込んで、だんだんと命令に従わなくなります。
一度与えた命令は、どんなことがあっても必ず犬に実行させることがかんじんです。
ときには犬が「ハウス」という命令を聞きながらも横着にかまえて、なかなか入ろうとしないことがあります。
こんなときは尻をたたき、強制して命令に従わせます。
これを何べんも根気よくくり返していくうちに、「ハウス」という命令だけで自分から犬舎の中へ入っていくようになります。
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吠えるのが犬の天職だと考えている人がありますが、これは間違いであって、はなはだ他人迷惑な考えです。
吠えさえすればいいというものではなく、何の理由もなく吠えまわる犬は番犬として失格ですし、家族や近所の人にとっても迷惑なものです。
しかし、必要なときだけ吠え、不必要なときは吠えないようにしつけるということは、吠えることが本能的な犬にとっては、なかなか難しいしつけといえます。
ですから、どのようなときにでも一応は吠えさせて、不必要な場合には飼い主の「やめ」の命令で、すぐやめさせるようにしつけたほうが効果的です。
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近所でも評判の犬を育てるためには、正しく歩くしつけが大事です。
これは犬を人間の左側につけて歩かせるためのしつけです。
道を歩いていて、子犬を引っぱっている人が、犬を右側に引っぱっていたり、また左側にかえてみたり、まちまちにしているのをよくみかけます。
戸外での犬の正しい歩き方は、必ず飼い主の左側につけ、左手で短くひもをもって歩かせます。
このしつけも、生後5カ月ごろから行なうのが楽で、自然に覚えさせることができます。
ひもを引く力の弱い子犬のうちに、しっかりしつけ、ひもをつけたら勝手な方向に歩いたり、ぐんぐん引っぱったりしてはいけないことを教えておくことがたいせつです。
こういう習慣をつけますと、たとえひもをつけないで歩くときも、犬はいつも飼い主の左側につくようになります。
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拾い食いをさせないためには、まず食餌の場所や時間、食器などをきめて与え、おやつなども人の手から直接与えることがたいせつです。
そして、「待て」で待たせ、「よし」ではじめて食べるようにしつけます。
このとき、食器の外にこぼれたものは絶対に食べさせないようにします。
また、散歩などのとき、犬が食物を口に入れたら、すぐ口から取り出して鼻先につきつけて「いけない」と強くしかります。
犬が拾い食いをしているとき、厳しくしかることもたいせつですが、もう一歩進んで、飼い主がわざと子犬の遊んでいるそばに、好きな食物をこっそり置き、犬がそれに気づいて食べようとしたら、頭ごなしにしかりつけるようにします。
ムチを使って犬の鼻づらをたたくようにすればなお効果的です。
このしつけは1度や2度でつくものではなく、根気よく、長い時間をかけなければなりません。
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犬の拾い食いは子犬のときから厳しくしつけないと、悪癖となってじつにみっともないものです。
これは小さいうちになおしておかなくては、成犬になってからではなかなかなおりません。
わたしたちの家庭では、犬に物を与えるとき地面に投げる習慣がありますので、飼い主が十分に注意し、まわりの人にも協力してもらわなければ、拾い食いをしないようにしつけることはなかなか難しいといえます。
一度拾い食いの習慣がついてしまうと、成犬になってから番犬などの役目をはたさないばかりか、腐ったものを食べて中毒を起こしたり、毒物を食べさせられて殺害されたりするようなことが起こらないともかぎりません。
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生後20日ぐらいの子犬でも犬舎の片隅に乾いた砂を敷いた箱を置きますと、そこへ行って用をたします。
しかし、もらわれてきた子犬の場合にはなかなかうまくいかないものです。
子犬は用便をもよおすと、床をかぎながらぐるぐる歩きまわったり、鳴いたり、落ちつきなく飼い主のところへきたり、何かの動作で表すものです。
こんな態度が見られたら、すぐ決めた場所へ連れて行ってやり、うまくできたら、「よしよし」とほめてやります。
最初のうちは、このように理想通りにはいきませんから、もし、決められた場所以外でしてしまったら、ただちに子犬をその場所へ連れて行き、鼻先をつきつけて「いけない」としかりつけるようにします。
これを最初から何べんもくり返しているうちに、子犬は決めた箱以外のところではもらしてはいけないという考えをうえつけられ、10日もすれば決められたところでするようになるものです。
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しつけは根気よく行なうといっても、時間が長いからよいとはいえません。
はじめは10分から20分ぐらいにして、朝夕2回行なうのがよいでしょう。
子犬の動作にいや気が察しられるようになったらすぐやめることです。
逆に、子犬の気分がよいようなら、ふだん以上に熱を込めてしこむようにします。
この時期のしつけは、あくまで子犬本位にするよう心掛けたいものです。
高橋ナツコ
ほめることと、しかることとの区別をはっきりすることもたいせつです。
飼い主のあいまいな態度は犬を迷わせてしまいます。
同じことをしてもあるときはほめたり、ほめなかったり、またはしかったり、しからなかったりでは、しつけの効果はあがりません。
「長くほめ、短くしかる」がしつけの基本と心得ておきましょう。
そして、ほめるときは心から賞讃を与え、悪いことをしたときはその場でしかることです。
時間がたってからしかっても、犬は何のためにしかられているか理解できません。
また、しつけを効果的に行なうためには、その犬の性質をよく知る必要があります。
乳の飲み方や兄弟たちとの遊び方、飼い主に対するなれ方などをよく観察し、性格を見たうえでしつけるのです。
高橋ナツコ
犬を家族の一員に加えるからには、人間社会の生活のマナーをしっかり教えることは愛犬家の責任です。
しつけを無視してただかわいがるだけでは、やがて他人に危害や迷惑をかけることにもなり、不愉快な思いをするだけでなく、犬自身にも気の毒な結果になりかねません。
しつけをする場合、最もたいせつなのは飼い主と犬との信頼関係です。
しつける人が愛情をもって、根気よく、言葉や手をかけてくり返し教えることがたいせつです。
ゆっくりと、できるだけ気持ちを長くもってしつけていくことであせって何もかも一緒にしつけようとすると、かえって失敗します。
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生まれてからおよそ60日くらいまでの子犬にとっては、ただ食べること、眠ること、兄弟たちとたわむれることが生活のすべてで、きわめてのんびりした日常を送っています。
ところが、成長するにしたがって、子犬の興味の対象は自分たちの仲間からしだいに飼い主のほうへうつっていきます。
食餌をするにしても、運動をするにしても、何かにつけて飼い主が関心の中心になってきます。
そして、幼犬となった子犬はそれまで育てた母犬の存在さえ、とかく忘れがちになっていくものです。
このことから、飼い主となる人たちは、子犬の第2の母親であるという強い自覚をもって子犬に接するよう心掛けなければなりません。
子犬のしつけは、生後2、3カ月ごろから始め、5、6カ月からは本格的に行ないます。評判の良い犬を育てるには、この時期がたいへん重要になります。
一人前の動作ができるようになるのは、それからおよそ1年ぐらいたってからです。
この間に、基本的なことをしっかりしつけておかなければなりません。
高橋ナツコ
犬を鉄道便やトラックで輸送するとき使うのが輸送箱です。
これは一方に鉄棒のひらき戸があり、また暑さに苦しまないように箱の両側に空気の出入りをよくする空気孔が2、3カ所あけてあります。
奥行は犬の体の1.5倍くらい、高さは犬め肩よりやや高めがよく、箱が大きすぎるのは、かえって犬のためによくありません。
持ち運びに便利なように、箱の両側に手がけをつけることも忘れないようにしましよう。
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屋内犬舎の置き場所は、夏涼しく冬暖かく、乾燥したところで掃除のしやすいところが理想的です。
できるだけ畳の上は避け、日当たりのよい廊下か板の間に決めましょう。
犬舎を畳の上に置くと、冬寒くなると人間のふとんにもぐり込んできたり、コタツの中へ入ってくる習慣がついてしまい、かえって犬の体を弱くしてしまいがちですし、家の中も不潔になります。
どんな小さな愛がん犬でも、犬のしつけをするうえから、一定の住まいとして屋内犬舎を置いてやるべきで、犬が安心して休んだり寝たりする場所は絶対必要です。
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ダックス・フンド、ポメラニアン、マルチーズ、仲などの小型の愛がん犬は、それほど運動量は必要なく、15?30分もすれば十分です。
しかし、室内で飼っている犬はとかく運動不足になりがちですから、庭先へ解放してボールなどを追わせて遊ばせたり、近所の散歩ぐらいはしてやりましょう。
足の発達している犬種や、戸外へ出ることを喜ぶ犬は、晴天の日に外へ連れ出し、公園や草原で遊ばせてやります。
散歩のとき必ず綱をつけることはいうまでもありません。
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中型犬のポインター種、セッター種、ブル・テリアなどは、毎日朝夕2回、30?40分、自転車による駆け足運動をするか、野原で自由に飛びまわらせましょう。
自転車運動は時間的に少なくてすみ、そのわりに運動量が多いので能率的です。
日本犬は割合運動量が少なくてもよいのですが、シェパードのような敏感な犬は運動不足になると、シェパードの特徴である頭のよさがしだいににぶってきます。
また、都会の騒音の中におくと、自動車や電車の音になれて敏感な頭がにぶくなります。
人通りの激しいところや自動車の交通量の多いところは避けるべきです。
高橋ナツコ
セント・バーナード、グレート・デン、秋田犬などの大型犬は、ふつう1日朝と夕方の2回少なくとも1時間の運動が必要です。
ただし、大型犬を子供の多い公園や人通りの多い道路などで運動させる場合、直接犬のほうから子どもに近寄らなくても、子どものほうで恐がって逃げまわったり、そのほか思わぬ事故を起こすことがあるので、なるべく早朝の人の少ないころを見はからって運動させるようにしましょう。
郊外の広々とした野原や、広い庭で運動させるのが理想ですが、どうしても街なかの公園や道路で運動させるときは、必ず綱をつけるようにしましょう。
成犬の運動を1日おきとか3日おきとか、不規則に行なうことは、犬の健康上よくありません。
毎日決めた時間に規則正しく行なうようにしましょう。
なお、グレート・デンはいくらか自転車運動に向いていますが、他の大型犬種は自転車運動には不向きで、ゆっくり連れ歩くようにします。
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犬の運動は、人間の場合と同じく、血のめぐりをよくし、食欲を増し、便通をよくします。
食餌とともに健康管理に欠かせないたいせつなもので、もちろん、肉体的健康の点ばかりでなく、精神衛生上からも忘れてはなりません。
ペット犬として飼われる以前、犬は山や野原を思いのまま駆けまわることができましたが、現在のように家に飼われている犬は、ほとんど自分の自由意志で歩きまわるということはできませんから、飼い主のほうで積極的に運動する機会を作ってやるべきです。
3日も4日もつなぎっ放しているようでは、犬を飼う資格はありません。
成犬の運動量は、犬の種類や大きさによって差がありますが、大体1日2回として、大型・中型犬は1?2時間、小型犬は30分くらいは歩かせたり、走らせたりします。
時間は、朝早くと夕方がよく、特に早朝は空気が冷えていますし、車や人通りも少ないので気持ちがよく、犬も喜びます。
運動が不足すると、筋肉や腱、靱帯(関節と関節をつなぎとめる筋)などがしだいに萎縮してきます。
そればかりでなく、内臓器官に障害が現れます。
また、犬の動きがにぶくなり、神経質になって、むやみに人に吠えたりするようになります。
また、ふだん犬小屋につながれている犬は、便をするのをがまんしていて、朝夕の運動に出たとき、解放感から、大小便をします。
どんな犬でもきれい好きですから、生理的に規則正しい排便をさせるためにも、朝夕の運動は欠かせないものです。
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ドッグフードは栄養面、衛生面からはバランスのとれたよい食品ですが、嗜好性という点では、犬の種類や生活環境によって異なるので、ドッグフードだけではよく食べないときは、ドッグフード8割、スープや肉類を2割程度の割合で与えてならしていきましょう。
また、現在の食事からドッグフードへ切り換える場合、犬の消化管は新しい食事に順応する酵素が完成するのにどうしても1週間は必要です。
したがって、少しずつ6?7日くらいかけて、食事を切り換えていきます。
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近年、ドッグフードが普及するにつれ、店頭にはいろいろな種類のものが並べられ、選ぶのに迷うほどです。
ドッグフードの種類ドライタイプ、セミモイストタイプ、ウェットタイプの3種類があります。
ドライタイプは、日本で最もポピュラーなタイプのドッグフードです。
水分が10パーセント程度で、加燃発泡処理された固形状のもののほか、ビスケット、粉末人工乳、フレーク・クランブル、半なまタイプなどもこの仲間です。
セミモイストタイプは水分が25パーセント程度で、ドライタイプとウェットタイプの中間のタイプです。
ハンバーガー、ひき肉状の製品があります。
ウェットタイプ(缶詰)は水分が75パーセント程度で、主として肉、または肉の副産物を原料とし、肉に不足している栄養素を加え、製造されたものです。
缶詰、ソーセージなどをいいます。
ドッグフードは犬の完全食ともいえるもので、犬に必要な栄養がバランスよく配合されており、保存もきき、調理の手間もいらないので、優れた食品といえます。
ただ、メーカーによって、材料の使い方がかなり違うので、信用のあるメーカーのものを選ぶようにしましょう。
ドッグフードを与える場合、かたいままで食べる犬は、そのまま与えてかまいません。
ただ水だけはいつでも飲みたいだけ飲めるようにしておいてください。
いつもやわらかい米飯ばかり食べていた犬の場合、ドッグフードにかえたときは、かたいままですと食べにくいことがあります。
お湯かスープ、ミルクなどに浸して、ヒタヒタ程度にしておくと数分間でやわらかくなります。
この場合のスープは魚や肉のほうがよいようです。
また今まで食べさせていた残り物や米飯を2割、ドッグフードを8割程度にしてやわらかくして与えたほうがよい場合もあります。
犬はかたいものをかむほうが歯の健康によく、特に歯槽膿漏の予防にもなるので、だんだんにならしてかたいままであげるようにしましょう。
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寄生虫、特に回虫の多数寄生による腸閉塞は、子犬は布片や、靴下、ビニール布などをよくじゃれて飲み込むことがあり、これが腸閉塞を起こす原因となることがあります。
腸重積は、腸管の一部がなんらかの原因でマヒするとか、または、一部分に蠕動運動が異常に元進するとかで、ちょうど、ストッキングを途中まで裏返して脱ぎかけたような状態に嵌入してしまい、症状としては、腸閉塞と同様、食欲不振、嘔吐、腹痛症状(背を曲げて、腹部をかばうような姿勢をとる)があらわれます。
いずれの場合でも、一刻もはやく医師の手当てを必要とし、開腹手術によって障害を取り除かなければなりません。
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